甲状腺の病気と治療

腫瘍性疾患

1.甲状腺の腫瘍(しこり)について

甲状腺のしこりは、めったに機能異常を伴わず、次の2つに分類されています。

a.良性

腺腫は、甲状腺の左右どちらか一方にしこりがひとつだけできるのが特徴です。ごくまれに、しこりが甲状腺ホルモンを過剰に生産し、バセドウ病のように甲状腺機能亢進症の症状を現すことがあります。
このほか、甲状腺に大小さまざまな大きさのしこりがいくつかできる腺腫様甲状腺腫があります。なかには鎖骨より下の胸の中(縦隔といいます)まで入り込むものもあります。

b.悪性:がん

甲状腺がんには、乳頭(にゅうとう)がん、濾胞(ろほう)がん、未分化がん、髄様(ずいよう)がん、悪性リンパ腫、の5つがあります。

(1)乳頭がん 日本人で最も多いのが、甲状腺乳頭がんという、進行が遅くおとなしいがんです。このがんは、早い時期にはただしこりがあるだけで、進行もきわめてゆっくりとしています。ただ、乳頭がんが進行すると、息苦しくなる、声がかすれる、ものが飲み込みにくい、といった症状が現れますが、たいていの人は、くびのしこりに気づいた時点で病院の診察を受けるため、最近ではここまで進行した患者様は珍しくなりました。
(2)濾胞がん 次に多いのは「濾胞がん」です。これもおとなしいがんで、しこりがあるだけでほかには異常がない場合がほとんどです。ただし、このがんの一部には、肺や骨など遠いところに転移することがあります。しかし、これも進行が遅く、早期に治療をすれば、治る率はかなり高いがんです。
(3)髄様がん 甲状腺がん全体の1~2%ほどを占める特殊ながんです。乳頭がんや濾胞がんのように、甲状腺ホルモンを作り出す細胞からできるがんではなく、カルシトニンと言う血液中のカルシウムを下げるホルモンを作り出す甲状腺内にあるC細胞から発生するがんです。髄様がんのうち、3分の1は家族性(遺伝性)に発生します。このため、遺伝性の髄様がんは遺伝子検査により、がんが発生する遺伝子があるかどうかを診断できるようになっています。
また髄様がんのなかには、非常にまれですが、副腎の褐色細胞腫や副甲状腺機能亢進症などほかの内分泌腺の病気を合併するものがあり、多発性内分泌腺腫瘍症(MEN)と呼ばれています。
(4)未分化がん 未分化がんは非常に未熟な細胞であるため、発育が急速で悪性度の高いがんです。ごくまれですが、乳頭がんや濾胞がんから未分化がんに変化するといわれています。高齢者に多く、若い人にはみられません。また、未分化がんは甲状腺がんの2%くらいに過ぎません。
(5)悪性リンパ腫 甲状腺の悪性リンパ腫は大変まれですが橋本病を基盤として起こります。
この病気の場合、急に甲状腺が大きくなったり、腫瘍のようにはれてくるのがもっとも特徴的な症状です。また大きくなってくると、飲みづらい、声がれ、呼吸が苦しい、などの症状が出ることがあります。

2.検査

甲状腺腫瘍はしこりがあるだけで、ほかには自覚症状がないのが普通です。
そのため、しこりの存在を確認した後、それが良性のものか、がんであるのかの鑑別にポイントを置いた検査が行われます。
検査では、甲状腺の血液検査で腫瘍マーカー(がん細胞特有の物質)の検査なども行いますが、中心になるのは超音波検査(エコー)と細胞診(エコー下穿刺吸引細胞診 )です。
場合によっては、CT検査で腫瘤と周囲臓器(気管や食道など)への影響を検討します。
以上のような検査で、ほとんど良性か悪性かの診断はつきますが、どうしても区別がつかない、あるいは疑いを否定しきれない、という場合には手術をして切除した腫瘍を顕微鏡で細かく診る病理検査によって診断します。

3.治療方法

良性腫瘍の治療

(1)内服薬

良性の腫瘍であることがはっきりすれば、経過観察となりますが、ときに甲状腺ホルモン薬(チラーヂンS)を服用し、それでしばらく様子をみることもあります。しかし、しこりがあまりに大きかったり、目立って気になったりするようであれば、手術で摘出します。

(2)穿刺

腺腫や腺腫様甲状腺腫も、時に「のう胞」(シスト)に変化することがあります。これは、しこりの内容が液状になって溜まったものです。液体はうす茶色から、チョコレート様のもの、ゼリー状のものなどさまざまです。この場合は、注射器で内容物の吸い出しを試みます。再び溜まってくることもありますが、繰り返し吸引しているうちに溜まらなくなることもあります。

(3)PEIT(経皮的エタノール注入療法)

おもにのう胞の縮小目的で行います。

(4)手術

もともと甲状腺腫瘤が大きい場合や、あるいは短期間に甲状腺腫瘤が大きくなってきた場合などに行います。

悪性腫瘍の治療

がんの場合は、いうまでもなく手術が基本です。
甲状腺のがんは進行が遅いため、たいていはリンパ節に転移したがんも含めてきれいにとることができます。くびには、神経や血管が集中していますが、専門の医師が注意して行えば基本的には胸やおなかの手術と変わりません。
肺や骨など遠くの臓器に転移している場合には、手術の後に放射性ヨウ素治療(アイソトープ)を行います。放射性ヨウ素には甲状腺に集まる性質があり、こんどは肺や骨などへ転移した甲状腺がんに集まるようになります。そして、転移した甲状腺がんに取り込まれた放射性ヨウ素は、そこでベータ線を出し、内部からがん細胞を破壊していくのです。放射性ヨウ素は、甲状腺の機能検査やバセドウ病の治療にも使われますが、がんの治療の場合はこれより多い量を使います。

4.日常生活

がんなどで、ひとつの臓器を摘出してしまうと、その後の生活がどうなるのか心配する人も多いと思われます。たとえば、甲状腺を大きく取り除いた場合や、全部を摘出してしまった場合は、甲状腺ホルモン薬の服用を続けなくてはなりません。しかし、内服をしていれば普通の人とまったく変わらない生活ができます。
このように、甲状腺の場合は甲状腺ホルモン剤を飲んでいれば全く生活の支障はありません。
ただし、甲状腺腫ホルモンの必要量は年齢や体調などで変わることがありますので、定期的につづけて検査を受けてください。

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